文化時報社作文コンクール「最優秀賞」受賞

第2回文化時報作文コンクールにおいて、本校3年の小林芽依さんの作文が最優秀賞を受賞しました。

文化時報第12881号(2021.11.29発行)・第12887号(2021.12.20発行)掲載

これは「お寺の100年後」をテーマに小中学生と高校生が作文を書いたもので、応募377作品の中から、小林芽依さんの「第二の実家へ」が選ばれたものです。
作文コンクールは、神仏を敬う心と思いやりんの精神を持ち、未来を力強く生きて欲しいとの願いを込めて開催されています。
今年も夏ごろに募集が始まるとのことで、今後もたくさんの応募を期待しています。

文化時報は宗教専門紙です。
写真は受賞を報じる掲載記事と、作文全文の掲載紙です。


「第二の実家へ」  兵庫大学附属須磨ノ浦高等学校3年 小林芽依

 2021年は大きく変化を遂げた一年でした。コロナ禍で「人とのつながり」が断たれてしまったことは私たち皆が今身をもって感じていることでしょう。
 現在の状況でお寺の百年後の未来を想像するのは難しいですが、日々めまぐるしく変化する今だからこそ、従来のしくみを見直すことが未来につながります。人とのつながりの大切さを痛感した私たちの学びから、何を生みだすかを問われているのです。未来は私たちの努力の結果によって生まれ、変えていけるのです。私は百年後に向け、今から始められることについて考えました。
 まずお寺が残すべきものは「日本人らしさ」です。お寺の持つ目的が苦を軽減するためである、これは高校で初めて学びました。以前の私のように仏教に興味を持たないまま、お寺やお墓のお参りの方法や意味を知らず、なんとなく合掌して流行りの御朱印をいただく、そんな若者は多いでしょう。親の習慣は子どもにもそのまま受け継がれてしまいます。では、今から始められるのは、家族連れにお寺の意味をしっかりと知ってもらうことです。気軽にお寺に来てもらえる機会はまだ十分とは言えません。
 日本人は仏教と関わりを完全になくすことはできません。私たちは物心ついた時から挨拶やマナー、礼儀を通して社会と交流していきます。例えば、食材の命と関わった全ての人への感謝を述べる食事のことばは、極端な言い方をすると、黙っていても食べられます。それを有難いことと捉え、ご飯を「いただく」の日本独自の文化であり、その宗教観こそがまさに「日本人らしさ」なのです。
 お寺は保育施設や法話会だけの場所ではなく、幅広い世代に対して、企業との連携や学童保育、子育て相談までカバーできると理想的だと考えました。特別な出来事でしか行かない場所ではなく、日常に組み込まれるほどに身近な場所であるためには、魅力をもっと引きださなければなりません。最大の強みである観光産業に力を入れることで、興味を持ってもらえる機会も多くなります。
 異なる分野との関係を結ぶのも重要だと考えます。若い世代にも人気があるアイドルやアーティストのライブや講演会などを取組むことで、実際に足を運んでもらえるからです。お寺へのイメージを損なうことなく、同時に歴史的建造物としての価値も伝えられるとなお良いと考えます。
 しかし、変わらないものも必要です。私は経を上げていただいた後の法話が大好きで、学べることがたくさんありました。み仏の教えをわかりやすく直接語ってもらえるような心が安らぐ時間や場所は、大切にしなければならない文化だと思います。
 お寺はたしかに衰退傾向にあるかもしれません。しかし私たちが日本人であり続ける限り、伝統的な心の拠り所となる存在は必要です。いつ立ち寄っても変わらずに迎え入れてくれる場所。かつ、常に変化し続け新鮮な発見もできるお寺になることで、百年後までそばで穏やかにあたたかく包み込んでくれる第二の実家のような、そんな新しく古いお寺を私たちがつくっていきます。